相続・家族・財産カウンセリング

福田真弓相続カウンセリングオフィス

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【第55回】不動産活用で減額の効果も

第49~58回

定年後の収入源にと不動産投資を検討中です。
将来の相続税負担や遺産分割を考えた場合、何か気をつけておくことはありますか。

不動産が相続税対策になる理由

今回は不動産を活用した相続税対策について考えます。
不動産の「相続税評価額」は「時価」より低く、不動産を上手に活用すれば相続税を減らせます。

原則として相続税は、亡くなった方の財産を時価で評価し計算します。

「亡くなった日にいくらで売れるか」が時価ですが、
不動産は実際に売らない限りはっきりとした時価が分かりません。

そのため、不動産は財産評価基本通達というものに従い評価しますが
その場合、宅地は時価の約8割、建物は時価の5~7割程度になるのです。

「親の終の棲家を新たに買う」「子のマイホームを生前に親名義で買い、子が無償で住む」といった
実需のある不動産の購入は相続税対策にもなります。

賃貸に出せばさらに評価額が下がり節税になる

また、不動産を人に貸せば、借りた人が借家権や借地権といった権利を持ち、
持ち主の権利が制限される分、評価額はもっと下がります。

また、貸付事業用の土地には「小規模宅地等の特例」も使え
上限200㎡までさらに評価額を5割引にできます。

たとえば、現金5000万円で土地4000万円と新築の建物1000万円を買うと
相続税評価額は約3800万円になり
それを賃貸し小規模宅地等の特例を使うと、評価額は約1700万円へと下がります。

マンションは一戸建てより相続税評価額が低くなる

マンションの購入も効果的です。

「タワーマンション節税」という言葉をご存じでしょうか。

マンションは土地と建物を別々に評価しますが
どちらも全体の評価額を各住戸の専有面積の割合に応じて按分します。

そのため、低層マンションより住戸数の多い高層マンションの方が
一戸あたりの土地の評価額は低くなります。

建物は、住戸の専有面積が同じなら階数や住戸の向きは関係なく同じ評価額になり、
市場価格の高い高層階や南向き、角部屋などは
時価と相続税評価額の差が大きく、より相続税を減らせます。

借金の相続には金融機関の許可がいる

このように、魅力的に見える不動産投資も、相続人が複数いる場合は慎重に行うべきです。

「借金で不動産を購入した方が節税になる」という誤解も多いようですが、
法律上、借金は相続人の「全員」が「法定相続分」で引き継ぐ義務があります。

遺産分割協議で、物件を相続する人が借金を全額引き継ぐと決めたとしても、
銀行の承諾がないと他の相続人にも借金を返済する義務が残ってしまいます。

節税できても遺産分割や納税はしにくくなる

また、相続人の1人が単独で不動産を相続し、他の相続人に金銭を払う「代償分割」を行うには
代償金の準備が必要です。

相続後に不動産を売却し、その代金を分ける「換価分割」を行うつもりでも
希望通りの価格で売れるとは限らず、測量費、仲介手数料、譲渡所得税といった
様々な売却コストが発生します。

相続税の納税についても、分割払いの「延納」や遺産そのもので納める「物納」が
認められるケースは少ないのが実情です。

相続対策は、「遺産分割」「納税資金」「節税」、この三つのバランスが肝心です。
生前に相続税を試算し、納税資金をどう手当てするかを事前に考えておきましょう。

最後に一言。

不動産投資は節税にもなり、楽して儲かる商売ではなく
地道な経営努力が要求される「ビジネス」だということも、頭に置いておくべきです。

-第49~58回

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