【第39回】 母の財産は誰のもの?

第37~48回

母の財産は誰のもの?

私が参加している「相続・後見マネー塾」では、メンバーが月に1回集まって、相続、後見、年金、生命保険などの各自が抱える事案につき、相談や議論をしています。

先日は雑談中に「父が亡くなると、母のお金の使途や財産に子どもが口を出すようになる」ことが話題になりました。ちょっとした旅行や買い物でも、母がお金を使うと息子がとがめるとか、娘が急に母と同居したいと言い始めたとか・・・。

もちろん子は、母が詐欺などの被害にあわないよう、財産の管理には十分気を配る必要があるでしょう。
でもメンバーからは「自分が将来、相続する財産が減ることが心配なのかな」「一緒に住めば、母のお金を自分が自由に管理できると思っていたりして」という辛口な意見もありました。

実際に私が受けるご相談も、生前贈与や二次相続に関するものが増えています。
相続税の負担を減らしたい子の気持ちも理解できますが、そもそも母があと何年生きるかは誰にも分かりません。
お金が有り余っている家庭は別として、子の「相続税対策」より母の「長生き対策」の方は大丈夫なのか、心配になることがあります。

生前贈与で相続税対策をしておかないと、相続税は払えない?

平成27年1月1日以後、母が子2人に1億円の財産を残して亡くなると、相続税額は合計770万円です。ただし、この1億円の半分が自宅の敷地であり、小規模宅地等の特例を使えれば(同居の子またはマイホームを持たない別居の子が、自宅の敷地を8割引で相続できれば)、相続税額は180万円で済みます。

仮に母が残した財産が2億円だったとしても、そのうち半分が自宅の敷地で小規模宅地等の特例を使えれば、相続税額は1,160万円です。非課税限度額ほどの死亡保険金を受け取れる生命保険に加入していれば、相続税はその保険金でほぼまかなえます。

国税庁のデータによれば、財産が2億円を超える相続税の申告件数は年間14,276件(平成23年)であり、相続税の実地調査件数はそれより約1割少ない年間12,210件(平成24事務年度)です。
相続税の納税資金や税務調査への備えなど、具体的な相続税対策が必要になるのは、財産が2億円を超える家庭だと考えておけばよいでしょう。

財産が2億円に満たないなら、小規模宅地等の特例を受けられるようにしておくことや、死亡保険金の非課税枠を活用することの方が、生前贈与を行うより先だと思います。民法上の要件を満たしていない生前贈与は、税務調査を受ける可能性が高くなります。それを名義預金だと指摘されれば、相続税に加え延滞税や過少申告(無申告)加算税も課されてしまうからです。

次回のコラムでは、税務以外の観点から、生前贈与の問題点について考えたいと思います。

-第37~48回

関連記事

【第37回】 謎だらけの過大役員退職給与(前編)

今回は、法令にも通達にも具体的な記載がなく、最も悩ましい問題だと言われている「過大役員退職給与」についてです。 税理士にも役員退職給与の適正額は分からない 税理士業務の傍ら、生命保険の代理店となり、法 …

【第42回】 「相続弁護士」「相続税理士」「相続司法書士」― 最適な専門家を探すには?(後編)

前回に引き続き、「相続の専門家」についてです。 状況により選ぶべき「相続」の専門家は違う 【司法書士】 不動産登記や商業登記などの「登記」の専門家です。相続に関しては、被相続人から相続人へ、土地や建物 …

【第45回】 成年後見制度と相続(前編)

65歳以上の4人に1人が認知症及びその予備軍 厚生労働省の調査によると、日本では65歳以上の方のうち、認知症の方は約462万人、軽度認知障害の方も約400万人に上り、4人に1人が認知症及びその予備軍だ …

【第48回】 「したつもり贈与」の落とし穴

前回に引き続き、贈与について考えます。 「贈与したつもりだったのに…」という事態を避けるには 他にも「預金の名義を変えたら贈与になる」「贈与税の申告書を税務署に提出し、贈与税を納めれば、そ …

【第43回】 もらう人が決めるから、もめる「遺産分割協議」

「もめると分かっている」相続が多すぎる! 「相続財産は自宅とわずかばかりの金融資産。生命保険への加入もなし。相続人である子どもは複数いて、そのうちひとりが被相続人と同居中」――。こんな相続税の申告事案 …