【第10回】 贈与の証拠の残し方

第1回~24回

先日、あるお客様から
「お孫さんへ贈与をするなら、当行の『定額自動送金サービス』がおすすめです、と
銀行の方に言われたのですが、先生、問題ないでしょうか」というお電話を頂きました。

問題、大ありです。それは贈与ではありません!

というわけで、今回は「贈与の証拠の残し方」についてです。

贈与でもらったものだと税務署に主張するには「証拠」が必要

自分の名義になっている預金について
それを過去に贈与でもらったものだと税務署に主張するには、必ず「証拠」が必要です。

【 贈与の証拠 】

(1) 贈与契約書 ― 民法上 ―
「あげた」「もらった」という意思があったことを証明するため。
もらったと口で言うだけでは、証拠にならず。すべて書面で残しておくこと。

(2) 印鑑・通帳の管理や支配、自由な使用収益 ― 税務上 ―
もらった人がもらった財産を持ち、自由に使えていること。
本当にもらったのなら当たり前。

(3) 贈与税の申告納税 ― さらに ―
年間110万円を超える額の財産をもらったら、当然、その義務あり。

相続税の法令や通達には「贈与」という言葉の定義がありません。
そのため税務署も、まずは民法の考え方に従います。

民法上、贈与は承諾によって成立する契約である以上、お互いの了承がない贈与はありえません。
だから、「あげた」「もらった」という証拠が必ず必要です。

これが(1)。

でも税務上は、贈与税がかかる贈与として、
「民法上の贈与」以外に第8回のコラムでご説明した「みなし贈与」というものを定めているように、
ある人が得をしたなら、その得をした部分には贈与税をかけてもよいと考えています。

つまり、もらった財産がその人に引き渡され、
「その人が使える=実際に得をしているという事実」が、
贈与について考える上では最も重要視されます。

これが(2)。

さらに、年間110万円を超える額の財産をもらったなら、贈与税を納めるのが国民の義務です。

これが(3)。

とはいえ、実際には、どこまで細かく証拠を残しておけばいいのでしょうか。

客観的に証明できる贈与の証拠を残しておくことが大切

過去に贈与があったとも、なかったとも、どちらともとれそうなあいまいな証拠しかなければ、
私たちと同じように税務署も、自分の立場が有利になる考え方をするのは当然です。

税務署は、税金が取れるような主張をするでしょう。

事実に反することを税務署から言われないためには、
自分の言い分を客観的に証明できるよう、できるだけ多く贈与の証拠を残しておくことが大切です。

どこまで細かく証拠を残すかは、その人がどの程度、確実にしておきたいか次第なのですね。

定額自動送金サービスは、贈与ではありません。
生前贈与を行う際には、(1)から(3)の贈与の事実を立証するための3要件をくれぐれもお忘れなく。

-第1回~24回

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