【第21回】 妻の老人ホーム入居金、夫が払うと贈与になる?

第1回~24回

妻の老人ホーム入居金に贈与税は課されるか?

介護保険がスタートして約13年。要介護認定を受け、自宅で介護サービスを受ける方も増えました。
介護保険は現物給付が原則ですが、1割の自己負担部分や生活費などを、介護を受ける本人ではなく、配偶者や家族が負担することもあるでしょう。

民法上や税務上、配偶者と直系血族、そして兄弟姉妹同士はお互いに扶養の義務があります(民法第752条・877条、相続税法第1条の2)。
夫が妻の介護費用を払ったり、別居している子どもが親の介護費用を払ったりしても、そのお金に贈与税はかかりません。相続税法第21条の3に「扶養義務者相互間において生活費や教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」には贈与税を課さないと、きちんと書かれています。

では、妻が要介護状態で、介護をする夫の側も高齢なので自宅で介護を行うのが難しく、妻を老人ホームへ入居させる決断をしたとします。
専業主婦であった妻は、金融資産を持っていません。入居金は夫や子が負担せざるを得ませんが、このお金にも贈与税は課されないのでしょうか。

事例にみる 贈与税の非課税かどうか

「通常必要と認められるもの」なら、贈与税の非課税財産です。
でも、何が通常必要かは生活レベルによっても違い、当然個人差があります。法令や通達にはどこまでが非課税なのかが書かれていないため、税務調査の場面でも争いが生じているのです。

国税不服審判所の裁決事例では
(1) 平成22年11月19日の裁決(入居金945万円)→贈与税は非課税
(2) 平成23年6月10日の裁決(入居金1億3,370万円)→贈与税は非課税ではないと、「配偶者の年齢や老人ホームでの介護を必要とする度合い」や「老人ホームの設備内容」などを基に、異なる判断がされています。

「介護付きか否か」「居室の広さ」「娯楽施設の有無」など、老人ホームといっても千差万別です。(2)のような超高級有料老人ホームは別として、たとえば(1)と(2)の中間、入居金が4~5,000万円の老人ホームの入居金だったらどう判断したらいいのでしょうか。
また、要介護認定でどの段階だったなら、自宅での介護が困難だと税務署が認めてくれるのかも分からないのが悩ましいところです。

それに、親の老人ホームの入居金を子が負担するケースもあるでしょう。
裁決事例では、「社会通念に従って通常必要な費用かどうかを判断する」と言っていますが、その分岐点ははっきりしません。長年苦労をかけた親に、少しでもいい老人ホームに入ってほしいと思った親孝行な子どもの思いに、贈与税を課される可能性だってあるのです。

平成27年からは、相続税の課税対象者が大幅に増えます

夫が妻の老人ホームの入居金を負担して、3年以内に亡くなると、たとえそのときには贈与税が課されなくても、相続税の生前贈与加算の対象になり、その入居金に相続税が課される恐れがあります。
小規模宅地等の特例以外にも、終の棲家を選ぶ際は相続税や贈与税に要注意、です。

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