【第22回】 妻が自分の通帳を税理士に見せなかったら?

第1回~24回

私の今年のモットーは「過程(家庭)を楽しむ」です。
仕事も家庭生活も、今年は結果に至る「過程」をより楽しみたいと思っています。

楽しむかどうかは別として、「過程」が大切なのは、相続税の申告業務も同じです。

正しい申告納税を行う「過程」

税務上、正しい申告納税を行うことが税理士の役目です。

でも、相続税の対象となる財産の「範囲」は
普通の人の認識と税務上の考え方とで大きく違う
ため、実務上、問題が生じることが多いです。

「ご主人「名義」になっている財産だけではなく、
ご主人の「稼ぎ」がもとになっている財産は、名義が誰かにかかわらず相続税がかかります。

なので、そういったものがあればその資料も頂けますか。
分からなければ過去の預金通帳をご家族のものも含めできるだけ多く見せて下さいね。
私が確認してみます」

このように、税理士が相続人であるお客様に説明し、
必要な資料を集めたり、情報を引き出したりしなければなりません。

この「過程」が税理士の腕の見せ所。
これを行わなくてよいのなら、私の仕事は数十倍楽になるでしょう。

なぜなら通常奥さまは、自分の財産がいくらあるかなんて、自ら税理士に言うはずがありません。

たとえ「先生は税務署の方みたい。私の財産までチェックするの?」と言われても、

「私がチェックしなくても、後で必ず税務署の方がチェックします。
そのときに見つかると、先に申告しておけば相続税はゼロなのに、
見つかったお金の大半が税金として国に取られてしまうこともあるんです」と答えます。

配偶者の税額軽減

相続税には、「配偶者の税額軽減」という規定があります。

奥さまが相続する財産が法定相続分か1億6,000万円のどちらか少ない金額なら、
奥さまに相続税はかかりません。

奥さまの財産をご主人の財産として申告しても、
よほどの資産家でない限り、納める相続税はゼロかごくわずかだけ。
その財産のほとんどが手元に残ります。

ただし、税理士のアドバイスを聞き入れず、税務調査で指摘を受けると
奥さまが「仮想隠ぺい」を行ったと言われます。

税理士が指導したのに見せない=隠した」ということになるのです。

その場合、配偶者の税額軽減が使えなくなり、相続税(10~50%)がかかるだけではなく、
利息である延滞税(年4.3%)も申告期限からの全期間分払わなければならなくなります
(本来は1年分だけ)。

罰金も、過少申告加算税(10・15%)ではなく重加算税(35・40%)が課されるので、
結局は隠したお金のほとんどを国に取られてしまうことになるのです。

税理士にお客様の預金通帳を調べる権限はありません。
でも税務署は、家族名義の口座でも、たとえ何十年前のものでも、職権で調べることが可能です。

注意喚起の意味を込め、これに関する国税不服審判所の裁決事例もいくつか公表されています。
どちらがいいかは一目瞭然。たとえ納得がいかなくても、名を捨てて実を取った方が断然お得です。

-第1回~24回

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