【第23回】 税務署が贈与を見つけるとき

第1回~24回

昨年の11月、国税庁のホームページに平成23事務年度における相続税の調査事績が公表されたとき、例年との違いについて大きな話題になりました。相続税に加え「贈与税」の調査事績も初めて公表されていたからです。

贈与税の調査とは

実地調査の件数は5,671件であり、そのうち申告もれの件数は5,331件でした。
申告もれ率だけ見れば94%と高い割合なのですが、平成23年分の贈与税の申告人数が暦年課税は約37万9千人、相続時精算課税は約4万9千人もいたことを考えると、贈与税は実地調査がほとんどないという印象を与えてしまうかもしれません。

ただし、国税庁のホームページの文章には「国税庁では、相続税の補完税である贈与税の適正な課税を実現するため、積極的に資料情報を収集するとともに、相続税調査等、あらゆる機会を通じて財産移転の把握に努めており、無申告事案を中心に、本事務年度も積極的に贈与税の調査を実施します。」と書かれています。
贈与税はあくまで相続税を補うための税なので、「相続税調査等を通じて」「財産移転の把握に努め」、あくまで「無申告事案を中心に」調査が行われているのです。

提出された相続税の申告書を基に、被相続人の取引金融機関にその方の家族名義の預金口座の有無や取引状況の照会を行ったら、生前に被相続人との口座間で預金の異動があるのを発見した。でも、相続税の申告書には家族名義の預金が計上されていない。そこで実地調査を行ったら、贈与税の申告もれだった。こんな流れなのでしょう。

贈与税の課税が生じるケース

税務署は、登記の情報からも贈与の事実を把握します。
不動産の所有権移転登記が行われると、売買などのは登記所から税務署に伝わります。税務署は「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」を当事者に送り、事実関係を確認します。
夫婦共有で不動産を購入した方が資金の負担割合に応じて登記を行っていないと思われる場合や、過去の所得の状況から見て資金力のない方が不動産を購入した場合には、贈与の可能性があるからです。

海外財産に対する監視の目も徐々に厳しくなっています。たとえば、国内にいる親が海外留学している子どもに送金する場合、100万円相当額を越えて外国送金を行うと、金融機関から「国外送金等調書」が税務署に提出されます。送金されたお金を子どもが生活費として使っていれば、相続税法第21条の3(贈与税の非課税財産)の規定により贈与税は非課税です。でも、そのお金で子どもが株式を買うなどの資産運用を行っていた場合には、子どもに贈与税が課されます。

子ども名義の建物の増築費用を親が負担した場合、保険料を負担していない人が生命保険金を受け取った場合など、贈与税の課税が生じるケースは他にもたくさんあります。

税務署内では個人課税部門(所得税)と資産課税部門(贈与税)が連携して調査を行うこともあります。税務署がどうやって贈与を見つけるか、積極的な生前贈与を行う際には、少し気にしておきたいですね。

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