「相続弁護士」「相続税理士」「相続司法書士」― 最適な専門家を探すには?(後編)

相続税相談の現場から

前回に引き続き、「相続の専門家」についてです。

状況により選ぶべき「相続」の専門家は違う

【司法書士】
不動産登記や商業登記などの「登記」の専門家です。相続に関しては、被相続人から相続人へ、土地や建物の名義の変更(相続登記)を行います。

司法書士が法務局へ登記を申請する際には、登録免許税(不動産の固定資産税評価額の0.4%)の納付が必要です。司法書士への支払額は、報酬と登録免許税の合計であるため、お客様が「司法書士の報酬は高い!」とおっしゃることがありますが、その誤解はきちんと解いておく必要があります。また、登録免許税の計算の基礎となる、固定資産評価明細書の取得を司法書士にお願いすることもあります。

相続登記には被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍が必要です。弁護士、税理士、司法書士などの士業は、依頼業務の遂行に必要な場合、相続人の委任状がなくても戸籍を取得することができますが、戸籍を切れ目がないように調査・取得するのは大変なため、戸籍の取得も司法書士に依頼することがあります。

【行政書士】
官公庁に提出する書類や、権利義務に関する「書類作成」の専門家です。相続に関しては、遺産分割協議書、内容証明など、各種書類の作成を行います。
税理士は、行政書士として登録すれば、行政書士業務を行うことができます。

遺言信託業務には特別な資格が必要?

また、信託銀行が行う「遺言信託」も、相続関連業務として、一般的によく知られています。

被相続人(遺言者)の生前に、公正証書遺言作成のアドバイスを行い(作成するのは公証人)、銀行員が作成の際の証人として立会い、遺言書の正本を保管します。
遺言者の死亡後は、遺言執行者として財産目録を作成し、その内容を相続人に報告し、財産の名義変更手続きを行います。相続人全員の署名や実印の押印がなくても、遺言執行者単独で財産の名義変更が行える点がメリットです。

難点は、相続時に行う業務は預貯金と有価証券の名義変更程度であるにも関わらず、報酬がやや高額であることです。不動産の名義書換を司法書士に、相続税の申告を税理士に依頼する際の報酬は、別途支払う必要が生じます。また、もめごとが生じている場合に遺言執行業務を行うと、弁護士法に違反する可能性が高いため、遺言執行業務自体を行わないことになっています。

遺言執行は信託銀行にしか行えない業務という訳ではなく、誰でも行うことが可能です。相続人全員の協力が得られそうなご家庭なら、相続人の一人を遺言執行者と定めておき、適宜、専門家が手伝う方法も考えられます。ただし、そのような場合でも、金融機関によっては相続人全員の署名や実印の押印を要求されたことがありました。

そのため、遺言執行の際は、もめごとが生じそうな方は弁護士に、相続税がかかる方は税理士に、不動産の名義書換を要する方は司法書士に手続きを頼んだ方が早く済むことが多いでしょう。

誰に何をどの程度頼めば安心か、その安心料をいくら払えるかは人それぞれです。
同じ専門家でも知識の量や経験の幅には個人差が大きい上に、報酬も一律ではありません。専門家の人柄や依頼者との相性もかなり重要なポイントになるでしょう。

-相続税相談の現場から

関連記事

親きょうだいの扶養義務

就職や結婚を機に家を出て、自分の家庭を持った後も 実家の親きょうだいが経済的に困窮している場合は、支援する必要があります。 ただ、誰がどの程度支援すべきかは、法の定めや各人の状況により異なります。 扶 …

「亡くなった人判定」から「もらった人判定」へ

※平成30年4月追記済 「自宅の土地の8割引特例」とは、亡くなった人の自宅の土地は、一定の面積(330m2)まで8割引で相続税を計算できるという特例です。 「自宅の土地の8割引特例」の条件 この特例が …

母の財産は誰のもの?

母の財産は誰のもの? 私が参加している「相続・後見マネー塾」では、メンバーが月に1回集まって、相続、後見、年金、生命保険などの各自が抱える事案につき、相談や議論をしています。 先日は雑談中に「父が亡く …

デジタル遺言制度の検討が始まっています

デジタル遺言制度の検討が始まっています 日本経済新聞 2023年5月6日 「デジタル遺言」制度創設へ ネットで作成/押印・署名不要 改ざん防止、相続円滑に 一般的な遺言の方式には「自筆証書遺言」と「公 …

生前贈与が相続税に加算される期間が7年に延長されます

令和5年度の税制改正で、相続税・贈与税の計算ルールに大きな変更がありました。 一番大きな変更点は、相続税の対象になる生前贈与の年数が長くなることです。 生前贈与の相続税への加算期間の延長 今までは、相 …

相続税相談の現場から
ブログ