ハルメク2023年8月号で遺産の寄付について取材協力及びコメント

相続税相談の現場から

雑誌ハルメクの2023年8月号で、遺産の寄付について取材協力及びコメントをしています。

ハルメクは書店売りのない定期購読誌ですが
50代からの女性に役立つ情報が多く、見本誌を頂くといつも熟読してしまいます。

今回もマネーライターの萬さんが、わかりやすくまとめてくださいました。

遺産を寄付する方法

「遺贈寄付」という言葉を、お聞きになったことはありますか。

この言葉は、法律用語ではなく造語ですが
一般的には、遺産を寄付する次の2つの方法のことを指しています。

遺言による寄付

1つめは、亡くなった方の意思で遺産を寄付することです。

具体的には、財産を持っている本人が生前に
「将来自分が亡くなったときは、遺産を特定の団体に残したい」という内容の
遺言を書いて寄付します。

つまり、寄付を行う人は「亡くなった方=被相続人」になります。

死後、遺言執行者がいれば遺言執行者が、いなければ相続人などが
寄付先への連絡や送金、領収書受領といった寄付手続きを行います。

相続財産の寄付

2つめは、亡くなった方が残した財産を、相続人の意思で寄付することです。

財産を持っている人が亡くなった後、その遺産を相続した相続人が
自分の意思で自分が希望する団体などに寄付します。

つまり、寄付を行う人は「亡くなった方の相続人」です。

遺産を寄付した場合の税メリット

遺産の寄付は税金が得になるといわれますが
誰の・何の税金が得になるのかが、わかりにくいのが難点です。

以下、誰が誰に寄付するかを整理しながら見ていきます。

遺言による寄付(被相続人が寄付)

【個人に寄付】

被相続人が、「個人や任意団体(町内会やサークルなど)」に遺言で寄付した場合
寄付先には「相続税」がかかります。

ただし、この寄付先が公益事業を行っているときは、相続税が非課税で遺産の寄付を受け取れます。

【法人に寄付】

被相続人が「法人」に遺言で寄付した場合
寄付先には、相続税ではなく「法人税」がかかります。

相続税の対象になるのは、あくまで個人が遺産を受け取ったときだけだからです。

ただし、公益法人、学校法人、社会福祉法人、
日本赤十字社、社会医療法人、更生保護法人、認定NPO法人などは
法人税が非課税で、遺産の寄付を受け取れます。

【まとめ】

一般的に、寄付先は法人であることが多いので
相続税の課税・非課税が論点になるケースはあまりなく

また、寄付先にも公益法人などが選ばれることが多いので
寄付した財産に寄付先で法人税がかかることもほぼありません。

どちらにしても、寄付をする被相続人ではなく寄付を受けた側の税金の話になります。

相続財産の寄付(遺産を相続した相続人が寄付)

本来は、いったん相続人が遺産を相続していますので
寄付した財産に対しても、相続税がかかります。

でも、相続した財産を世のため・人のためにと寄付したのに相続税を課税するのは
普通に考えておかしな話です。

そのため、相続税の申告期限までに
公益法人、学校法人、社会福祉法人、
日本赤十字社、社会医療法人、更生保護法人、認定NPO法人などに寄付した場合
その寄付した財産については、寄付した人の相続税は非課税とされています。

※要相続税申告・証明書類添付

なお、そもそも遺産の総額が
相続税の基礎控除額を超えていなければ、相続税の心配は不要です。

また上記は、現金を寄付する場合の考え方で
不動産や株式など寄付する場合は、さらに考え方が複雑になります。

遺産の寄付により、所得税などの負担が軽くなるケースもありますので
遺産の寄付について検討されたい場合は、どうぞ遠慮なくご相談ください。

-相続税相談の現場から

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