生命保険、一定枠まで非課税

相続税相談の現場から

銀行で、相続対策にもなるからと、生命保険を勧められました。
どのようなメリットがあるのか、具体的に教えて下さい。

生命保険が相続対策になる理由

定期預金が満期を迎えた高齢者らが
銀行の窓口で終身保険(死亡保障が一生涯続く生命保険)の契約を勧められるケースが増えています。

死亡保険金は、「遺産分割」と「相続税」の取扱いが他の財産とは違い
相続対策に役立つことも理由の一つだと考えられます。

理由1 遺産ではない

遺産分割を行う際に、死亡保険金は亡くなった方の財産に含まれません。

法律上、亡くなった方が保険料を払っていても
保険金は保険会社との契約で「受取人」に指定されている人の財産になるからです。

そのため、法定相続分や遺留分といった取り分とは別枠で、受取人は保険金を受け取れます。

理由2 非課税枠がある

ただし、死亡保険金は亡くなったことに伴い支払われるため
税務上は相続税の対象になります。

それでも、相続人が受け取った死亡保険金は
「500万円×法定相続人の数」まで相続税が非課税になります。

非課税枠があるため、同じ金額を預金で残すより得になるのです。

理由3 すぐにキャッシュが手に入る

解約には相続人全員の同意が必要となる他の金融資産とは違い
生命保険は受取人が単独で保険会社に保険金の支払請求ができ
1週間程度で現金が手に入る点も利点です。

相続対策のために契約した保険を生前に解約すると、元本割れしたり
外貨建ての場合には、為替の変動や手数料の負担で損をしたりする恐れがあります。

亡くなるまでに解約しないことが大前提なので、余裕資金の範囲に留めておくことが肝心です。

代償金として利用する場合は、受取人の決め方に注意

また、気をつけたいのが「誰を保険金の受取人にするか」です。

配偶者の年金収入や金融資産が少ない場合は、「配偶者」を受取人にしても構いませんが
相続税がかかる場合や自宅を特定の子に相続させたい場合は
納税資金や代償金の原資とするため「子」を受取人にします。

たとえば、父と同居していた長男が自宅を単独で相続する場合
他の兄弟の取り分を、長男が自分自身の蓄えから「代償金」として他の兄弟に払う形で
遺産分割することがあります。

父が「長男」を受取人とする保険に入っておけば
長男は保険金を元手に他の兄弟に代償金を渡せます。

しかし、自宅を長男に相続させる代わりに、「他の兄弟」を保険金の受取人にすると
他の兄弟は保険金とは別に取り分の主張ができますので、避けましょう。

保険料贈与プランの活用

親が子に現金を生前贈与し、それを子が保険料として払い込み、親に保険をかける活用法もあります。

死亡保険金にかかる税金の種類は、「誰が保険料を払い」「誰が保険金を受け取るか」で変わり
受取人が自分で保険料を払っていたら、保険金には所得税がかかります。

この場合、受取額から掛け金や特別控除を差し引いた額の2分の1が課税対象になるため
相続税がかかるより税負担が軽くなることがあります。

生命保険契約に関する権利

なお、亡くなった方が「契約者(保険料負担者)」で、保険金が出ない場合も
解約返戻金相当額があれば、それが相続税の対象になります。

申告もれが多いので、今年から保険会社が税務署に提出する調書が改正になり
税務署に把握されやすくなっています。

-相続税相談の現場から

関連記事

贈与していないのに贈与税がかかる?

前回のコラムでは 妻が夫の預金口座から自分の口座にお金を移したとしても 夫から妻へ「贈与」が行われていないなら 法律上の「持ち主」は夫のままだとご説明しました。 そして、たとえ夫婦の間でも 夫から妻へ …

生前贈与が相続税に加算される期間が7年に延長されます

令和5年度の税制改正で、相続税・贈与税の計算ルールに大きな変更がありました。 一番大きな変更点は、相続税の対象になる生前贈与の年数が長くなることです。 生前贈与の相続税への加算期間の延長 今までは、相 …

進む事業承継への環境整備

事業承継税制はこう変わる 平成25年度税制改正で事業承継税制(非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)の見直しが行われました。 事業承継税制とは、中小企業の後継者が現経営者から株式を承継する際に …

産経新聞 日曜朝刊連載「100歳時代の歩き方」取材協力及びコメント

産経新聞の日曜朝刊「100歳時代の歩き方(全5回)」にて 相続税について取材協力及びコメントしています。 2024年9月いっぱいの連載です。 第1回 相続税はお金持ちしか関係ないのでは いや、そうでも …

相続時精算課税、使ってみても大丈夫?

対象者が広がった相続時精算課税制度を活用すべき? 平成25年度の税制改正で、相続時精算課税制度が今までより使いやすくなります。 平成27年1月1日以後の贈与から、贈与者の年齢要件が60才以上(現行は6 …

相続税相談の現場から
ブログ