広くて大きい土地持ち=お金持ち?

相続税相談の現場から

※この「広大地の評価」は、平成29年12月31日以前に相続があった場合に適用できる規定です。
平成30年1月1日以降の相続については「地積規模の大きな宅地の評価」の適用を受けられるかを検討して下さい。

国税庁/「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシート

相続税の申告事績(国税庁公表)によれば、相続財産の金額別構成比は過去10年間、「土地」がNo.1の座を占めています。
普通の人の感覚なら、持っている土地が広いほどより大金持ちということになりそうですが、その土地を売るときや相続税の計算をするときには、少し違った考え方をするのです。

相続した土地を売るときのポイント

東京23区内の高級住宅街に1,000㎡の土地を持っていたお客様が亡くなりました。路線価は30万円なので、路線価に地積をかけると3億円です。
相続人は相続税の納税資金に充てるため、その土地を売ろうとしましたが、路線価は時価より低いはずなのに、路線価の3億円でもまったく買い手がつきません。
妥当な売却価格は、いったいいくらなのでしょう。

ポイントは「その土地を買った相手は、その後どう使うのか」です。
1,000㎡の土地に豪邸を建てるため、ひとりでポンと3億円を出せる人を探すのは大変です。でも、数千万円で200㎡の土地を買い、自宅を建てて住みたい人は、この高級住宅街ならおそらくすぐに現れます。
最終的にこの土地は、4~5区画に割って道路を入れ、それぞれ別々のお客様に売られることが想定され、買主はそれを行える「不動産会社」になるのです。

「広大地」の相続税の計算

ただし、いったんは不動産会社が買ったこの土地、すべてがお金になる訳ではありません。

原則的に、建物の敷地は道路に2m以上接しなければならないことになっています。この土地を単にABCDの4区画に区切っただけでは、奥にあるA区画・B区画の土地は道路に接することができないので、建物を建てることができません。
上の図のように「開発道路」を作り、A区画・B区画の土地も道路に接するように、土地の開発を行う必要があるのです。
開発道路はお金にならない土地(つぶれ地)です。開発費用もかかります。当然不動産会社としては、その分安く相続人から土地を買わなければなりません。

相続税の計算上も、1,000㎡の土地は100㎡の10倍の値段では売れないということを考慮します。
このような土地を「広大地」と呼び、路線価に「広大地補正率」という特別な割合を乗じて評価します。通常、路線価の4割引以上になるという大幅な割引です。

相続税の申告に際し、土地の評価について税務署から指摘を受けることは少ないのですが、例外がこの「広大地」と「小規模宅地等の特例」です。
土地の評価額が4割引、5割引、8割引になる特例なので、当然と言えば当然かもしれません。

どんな土地が広大地に該当するのか、どんな方法で評価するのか、【広大地の要件】と【広大地補正率】については、次回、ご説明したいと思います。

-相続税相談の現場から

関連記事

「したつもり贈与」の落とし穴

前回に引き続き、贈与について考えます。 「贈与したつもりだったのに…」という事態を避けるには 他にも「預金の名義を変えたら贈与になる」「贈与税の申告書を税務署に提出し、贈与税を納めれば、そ …

国税庁など「令和5年分相続税の申告事績の概要」を公表

国税庁や東京国税局などは、12月18日に「令和5年分相続税の申告事績」を公表しました。 相続税を納めた人や、相続税申告をした人の割合は、過去最高を更新しています。 相続税の課税割合と申告割合 国税庁や …

相続人が海外に住んでいる場合の相続手続き

相続人が海外に住んでいる場合は、相続手続きに必要な書類が通常と異なります。 日本国籍のある・なしに分けて、見ていきます。 日本国籍のある相続人の方 海外に住んでいて、日本国籍のある相続人の方は 印鑑証 …

広大地バンザイ?

※この「広大地の評価」は、平成29年12月31日以前に相続があった場合に適用できる規定です。 平成30年1月1日以降の相続については「地積規模の大きな宅地の評価」の適用を受けられるかを検討して下さい。 …

不動産活用で減額の効果も

定年後の収入源にと不動産投資を検討中です。 将来の相続税負担や遺産分割を考えた場合、何か気をつけておくことはありますか? 不動産が相続税対策になる理由 今回は不動産を活用した相続税対策について考えます …

相続税相談の現場から
ブログ