【第52回】生前贈与 契約書で証拠残す

第49~58回

孫名義の口座に毎年110万円ずつ振り込み、生前贈与しています。
無駄遣いを防ぐために本人には知らせていませんが、問題ありませんか。

誤解だらけの生前贈与

生前贈与についての誤解をよく耳にします。

「家族の口座へ毎年110万円ずつ振り込めば贈与税はかからない」
「贈与税の申告書が贈与の証拠になる」など、贈与と贈与税を混同したものが多いようです。

「あげます」「ありがとう」の両方があって初めて贈与になる

贈与は、財産をあげる人の「あげます」ともらう人の「ありがとう」
この両方の意思があって成立する契約です。

民法に定めがあり、あげる側の一方的な意思表示だけでは成立しません。

「あげます」「ありがとう」の意思表示は口頭でも構いませんが
贈与の有無が問題になるのは、通常あげた人の亡くなった後です。

「確かにあげました」と証言できませんので
必ず両者が署名捺印した贈与契約書を作り、証拠を残しましょう。

「使っちゃダメ」なら贈与にならない

贈与した財産が、実際にもらった人の手に渡ったかも重要です。

もらう人が普段から使っている生活用の口座に振り込むか、
新たに口座を作るなら、もらう人自身の印鑑を使い、もらった人が通帳やカードを保管します。

引っ越しや結婚で住所や氏名が変わったら、その都度変更手続きをします。

今回のご質問のように、孫の口座にお金を振り込んでも
そのことを孫が知らない、または、知っていても使えない状態の場合
贈与があったことにはなりません。

孫の名義を借りた祖父の預金だと判断され
遺産分割や相続税の税務調査の場面でトラブルになりますのでやめましょう。

相続税と贈与税の違い

贈与税の申告が必要かの判断は、実際に贈与があった「後」に行います。

亡くなった方から財産を相続するとかかるのが「相続税」
生前に贈与でもらうとかかるのが「贈与税」です。

相続税と贈与税には様々な違いがあります。

「相続税」の非課税枠は遺産全体に対する金額です。
遺言を書かない限り、相続できるのは配偶者や子などの相続人だけです。

一方、「贈与税」の非課税枠はもらう人ごとに毎年110万円で、相続人以外にも贈与できます。
年110万円以下なら、贈与税の申告や納税も不要です。

違いを活用した節税法と注意点

この違いを上手く利用して、元気なうちから親族に年110万円以下の贈与を続ければ
贈与税がかからず、相続税の対象となる財産を減らせます。

一般の方の相続税対策は、この方法で十分です。

贈与契約書を作り、財産をきちんと渡せば、贈与する金額を毎年変えたり
あえて年110万円を超えて贈与し、贈与税の申告と納税を行ったりする必要はありません。

ただし、相続人などに対する相続開始前3年以内の生前贈与は
年110万円以下の贈与でも相続財産に加算され、相続税の対象になります。

そのため、あげる人が既に高齢なら、相続人以外の人への贈与を検討します。

祖父から孫への贈与なら、亡くなる直前の贈与であっても相続財産には加算されず、
また、子供の代を一代飛ばすため、孫へ財産が渡るまでの相続税の総額を少なくできます。

しかし、祖父が認知症になるなど意思能力が十分でなくなると、その後贈与はできません。

子ども同士が将来遺産分割でもめないか、贈与の有無や金額の多寡の公平性にも配慮が必要です。

富裕層の方向けの生前贈与の活用法は、次回、紹介します。

-第49~58回

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