デジタル遺言制度の検討が始まっています

相続税相談の現場から

デジタル遺言制度の検討が始まっています

日本経済新聞 2023年5月6日
「デジタル遺言」制度創設へ
ネットで作成/押印・署名不要 改ざん防止、相続円滑に

一般的な遺言の方式には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。

遺言は亡くなった方の最後の意思。
適切な遺言が残されていれば、相続争いは起きにくくなります。

ただ、遺言を作るのは通常、高齢の方なので
自筆証書遺言の本文をミスなく手書きするのはとても大変ですし
公正証書遺言は、公証役場に出向く手間や費用がハードルになっていました。

法務省では以前から
自筆証書遺言のデジタル化の検討が進められていましたが

第2回 デジタル基盤ワーキング・グループ 議事次第 令和4年3月1日(火)

このたび新たに
インターネット上で遺言を作ったり、保管したりする制度をつくるため
民法の改正をめざすとのこと。

令和6年3月を目処に、制度の方向性が示される予定だそうです。

デジタル化のメリット・デメリット

ちなみに今の制度でどのくらいの人が遺言を作っているかというと

年間の死亡者数が144万人(令和3年)なのに対し
死後の自筆証書遺言の検認件数は、年2万件弱(令和2年)にすぎません。

※公正証書遺言は、死後の公的手続きが不要なのでデータがありません。

また、生前に遺言を作成している方の数は
自筆証書遺言の保管制度を使って法務局に遺言を預けた人は、年17,000人弱、
公正証書遺言を作成した人は、年12万人弱となっています。

法務省/遺言書保管制度の利用状況

日本公証人連合会/令和4年の遺言公正証書の作成件数について

将来的にデジタル遺言がスタートし
ネット上のフォーマットに沿って入力していくような形になれば
素人でも作りやすくなるので、遺言を作成する人は増えるでしょう。

ブロックチェーンの技術を使えば、改ざんリスクもなくなり、安心です。

ただ、遺言の効力が生じるのは遺言者の死後なので
たとえ遺言者が認知症ではなかったとしても
遺言の内容が「本当に本人の意思なのか」が争いになる可能性は残ります。

生体情報と本人確認書類で本人認証を行い、電子署名したとしても。

今も実務上、公証人が関与しているはずの公正証書遺言でさえ
「これが本当に本人の意思?」という内容の遺言に遭遇することがあります。

遺言を作りやすくなれば
それに伴い、制度を悪用する人が増えるかもしれないという懸念もありますね。

早めに遺言について考えておきたい方は、どうぞ遠慮なくご相談下さい。

-相続税相談の現場から

関連記事

マンションの相続税評価方法の見直しが検討されています

相続税や贈与税の計算上、財産は「相続時の時価」で評価することになっています。 この相続時の時価とは、一般的に 国税庁の定めた「財産評価基本通達」で評価した評価額(通達評価額)のことをいいます。 現在の …

贈与の前に母の長生き対策を

生前贈与が相続争いの火種を作る原因に 相続税の軽減対策ではなく、相続対策、つまりもめない相続を目指すという観点からは、生前贈与を行わない方がいいケースが多くあります。 生前贈与を考慮して相続時の取り分 …

自分でできる相続税申告の本

改訂版『自分でできる相続税申告』が発売されました

『自分でできる相続税申告』の改訂版(第2版)が、昨日発売になりました。 自分で相続税申告をしてみたい、という方のお役にたてばうれしいです。 旧版→改訂版で変わった点 増刷の都度、民法や税法の改正につい …

令和5年分の路線価が公表されました。全体的に上昇傾向です

昨日、7月3日に、令和5年(2023年)分の路線価が公表されました。 令和5年中に亡くなった方の相続税や、贈与を受けた方の贈与税は この令和5年分の路線価図・評価倍率表を使って計算します。 路線価、全 …

生命保険、一定枠まで非課税

銀行で、相続対策にもなるからと、生命保険を勧められました。 どのようなメリットがあるのか、具体的に教えて下さい。 生命保険が相続対策になる理由 定期預金が満期を迎えた高齢者らが 銀行の窓口で終身保険( …

相続税相談の現場から
ブログ