マンションの相続税評価の見直し、通達案が公表されました

相続税相談の現場から

国税庁、通達案について意見募集を開始

7/21に国税庁は、マンションの相続税評価方法の見直しについて、通達案を公表しました。

「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)に対する意見公募手続の実施について

8/21までの1か月間、この案に対する意見が公募されています。

なので、今のところ令和6年1月1日以後の相続や贈与から、評価方法が変わる予定ではありますが

適用時期・改正内容ともに、まだ確定ではありませんので、ご注意下さい。

見直しの対象は、居住用のマンションだけ

まず、今回の改正で評価方法が見直されるマンションは、あくまで「居住用」だけです。

したがって、事業用のマンションや
区分所有の形ではないマンションの評価方法は、改正後も現状のままになります。

現状の評価方法については、以下を参考にして下さい。

マンションの相続税評価方法の見直しが検討されています

改正のポイントは「評価かい離率」

そして、どのように改正される予定か、通達案の内容をざっくり解説すると

マンションだけに特別に、新たな評価方法を導入するのではなく

従来通りの土地・建物の評価方法をベースとした上で

マンションの「市場価格」と「相続税評価額」の乖離が大きい場合に限り
従来の方法による評価額に一定の補正率をかけて、評価額を調整する仕組み
になっています。

具体的には、マンションの

・ マンション全体の築年数(新しさ・古さ)
・ マンション全体の総階数(タワマン度)
・ 自室の所在階(高層階か・低層階か)
・ 自室の敷地持分狭小度(土地の持ち分が少なすぎないか)

をもとにした「評価かい離率」を求めます

(算式)
評価かい離率=A+B+C+D+3.220

A= 築年数×△0.033
B= 総階数指数×0.239 ※総階数指数=総階数/33。1を超えるときは1
C= マンション一室の専有部分の所在階×0.018
D= マンション一室の敷地持分狭小度×△1.195 ※敷地持分狭小度=一室の「敷地利用権の面積/専有部分の面積」

この算式で計算した評価かい離率が「1.67」を超える場合は
相続税評価額が市場価格より低すぎる水準とみなし、評価額をアップさせる調整が入ります。

※逆に、相続税評価額が市場価格より高すぎる場合のマイナスの調整計算も導入されますが
該当するケースは少ないと思いますので、ここでは説明を省きます。

今後、国税庁から自動計算ツールが公表の予定

なお、上記のABCDは
対象物件の登記簿謄本や固定資産税課税明細書を見れば計算できますが

実際に評価額がどの程度がアップするかの計算は、もう少し複雑ですし
今後、国税庁から、これを簡単に計算できるツールも公表されるそうなので

専門家以外の方は
「新築、タワマン、自室が高層階、土地の持ち分が少なめだと、評価額がアップするんだ…」
といったイメージだけで、今は十分だと思います。

とはいえ、私もお客様からご相談を受けて、いくつか計算しましたが

東京都心だと、新築やタワマンではない、中古で低層のマンションでも
調整計算が入り、従来より評価額がアップするケースが多かったです。

なので、不安なので事前に確認しておきたいという方は、個別にご相談頂ければと思います。

-相続税相談の現場から

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