高齢になった親の家 早めの売却も選択肢

相続税相談の現場から

自宅の階段の昇り降りがつらくなったと、実家の母がこぼしています。
親の自宅を売るタイミングによる税負担の違いがあれば教えて下さい。

親の自宅の売却、そのタイミングは?

「親の自宅をいつ売るべきか」というご相談が増えています。

相続税の損得だけなら話は簡単です。

親が生前に自宅を売り、その売却代金を子が相続するより、
自宅のまま相続した方が、子が負担する相続税は少なくて済みます。

不動産の相続税評価額は時価より低く
自宅の敷地は「小規模宅地等の特例」の対象にもなるからです。

ただし、自宅を相続する子の負担は相続税だけではありません。
毎年の固定資産税や、マンションなら毎月かかる管理費や修繕積立金も重荷になります。

将来、子が住まない可能性が高ければ、親が自宅を早めに売るのも選択肢のひとつです。

認知症などで親の意思能力が不十分になると、後見人をつけない限り売却できなくなってしまいます。

所有期間10年超の自宅を売ると、通常より所得税が得になる

また、「自宅」を売る時にかかる所得税は
利益が出ても損をしても、負担が軽くなるよう様々な控除や特例などがあります。

相続後に子が親の「元自宅」を売るより、生前に親が「自宅」として売った方が得になります。

不動産の売却益のことを「譲渡所得」といい
収入金額から取得費(建物は時の経過による目減り分を差し引く)と譲渡費用を差し引いて
計算します。

譲渡所得に対する所得税の税率は
所有期間が5年超の長期なら20%(所得税15%+住民税5%)
5年以下の短期なら39%(所得税30%+住民税9%)です。

計算例

売却収入 5,000万円
取得費  1,000万円
譲渡費用   200万円

【自宅以外の不動産の売却】
5,000万円-(1,000万円+200万円)=譲渡所得3,800万円
3,800万円×20%=760万円

譲渡所得3,800万円に、20%の税率が適用され、760万円の税金がかかります。

【所有期間が10年を超える自宅の売却】
3,800万円-特別控除額3,000万円=譲渡所得800万円
800万円×14%=112万円

所有期間10年超の自宅の売却では、譲渡所得から最高3,000万円を控除でき
税率は14%(所得税10%+住民税4%)に軽減され、納める税金は112万円で済みます。

売却損の取り扱いも、通常の所得税より得になる

親が老人ホームや子の家などに転居し、その後空き家になっている元自宅を売った場合も
転居から3年を経過する年の年末までなら、3,000万円控除や軽減税率を使えます。

介護の必要度や家族の事情などを見計らいながら、転居や売却のタイミングを選べます。

自宅の買換えで損が出ても、給与や年金など他の所得と損益通算できる場合があり
相殺できない分は翌年以後3年間繰り越し、将来の所得税と住民税の負担を軽減できます。

自宅の売却は、税金面で非常に優遇されているのです。

親の死後、子が実家を売った場合は

相続後、子が実家を売るときに使える軽減措置もありますが、
親が自宅を売る場合に比べ、適用できるケースは限られます。

まず、相続時に相続税を納めていれば
相続から3年10か月以内に実家を売ると、相続税の一部を譲渡所得から差し引けます。

または、「一人暮らし」の親が亡くなり空き家になった実家を売る場合
譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。

ただし、親が自分の自宅を売る場合の3,000万円控除とは違い

・ 売却代金が1億円以下
・ 昭和56年5月31日以前に建築された一戸建てのみ(マンションは不可)
・ 建物を取り壊し更地にしてから売却するか、建物を耐震リフォームしてから売ること

などの厳しい要件があります。

自宅の売却には気力も体力も必要です。
身の回り品の処分にも、思いのほか時間がかかります。

元気なうちから早めに親子で話し合い、徐々に準備を進めましょう。

-相続税相談の現場から

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