本当に必要な相続税対策とは

相続税相談の現場から

平成25年度の税制改正で、相続税は増税され贈与税は緩和されました。
「相続税対策が必要なのかな」と、漠然とした不安を感じる方も増えるでしょう。

そこで、新たに相続税の対象となる財産額が5000万円~1億円くらいの方にとって
「本当に」必要な相続税の知識と対策をまとめてみます。

【1. 基礎控除額】―相続税がかかるのかを知る―

相続税には基礎控除額という枠があり、財産がこの金額以下なら相続税はかかりません。
税務署への申告や届出も不要です。

この枠が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に改正されました。
子ども2人の家庭なら財産額4,200万円が相続税のボーダーラインになります。

【2. 税率】―かかるとしたらいくらくらいか―

【1. 基礎控除額】の枠を超えると、相続税がかかります。
相続税の申告書の提出も必要です。

概算の税額は、国税庁のHP上にある「速算表」で計算できます。

【3. 2大特例が使えるか】―要件を満たせば相続税が安くなる―

「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」が使えるかがポイントです
(「小規模宅地等の特例」はコラム第12回で解説)。

配偶者に相続税がかからずに
さらに、亡くなった人の自宅の土地が8割引で相続できれば、おそらく相続税はゼロかごくわずかです。

ただし、亡くなってから10ヶ月以内に遺産分割協議をまとめ、申告書を提出しなければなりません。

【4. 相続税がかかるなら遺言書は必須】―遺言書を書くことが一番の相続税対策―

遺言書がない場合
遺産分割協議で相続人「全員」の意見を一致させるには、かなりの苦労が伴います。

また、小規模宅地等の特例は
原則的には亡くなった人と同居していた親族がその土地を相続するのが要件です。
これを考慮し、親子の住まいについて戦略を練っておいた方が後々損をしません。

つまり一番の相続税対策は、生前のうちに親子が同居した上で
親が遺言書を書き、その子に自宅を相続させることです。

ただし他の子にも取り分がある以上
遺留分相当額のキャッシュを、生命保険や贈与などを活用し、別途準備しておくことが必要です。

【5. その上で】―相続税の対象となる財産の範囲を間違えないこと―

たとえ家族名義の財産でも
亡くなった方の稼ぎがもとになっているなら、相続税の対象になります。

また、生前に贈与したつもりでも
贈与があったとは税務署が認めてくれず、相続税がかかることもあります。

そもそも「どの財産に相続税がかかるのか」を知らなくては
いくら節税対策を講じてもまったく意味がありません。

【1. 基礎控除額】以前の話として、「その財産が誰のものか」についての正しい知識が必要です。

◇     ◇     ◇

「増税=即節税対策」ではありません。
普通の方が見聞きする相続税に関する情報は
相続ビジネスを行っている方にとって、報酬を得やすい内容に偏っていることもあります。

得た情報は鵜呑みにせず、自分で取捨選択するようにしたいですね。

-相続税相談の現場から

関連記事

二拠点生活をする場合の住民税

二拠点生活をする場合 住民税は、住民票を置いている方の市町村におさめます。 2か所に住まいがあっても、2か所に住民税をおさめる必要はありません。 住民税は住民票をベースに判定される 個人住民税は 1/ …

事業承継を恐れず、好機を逃さず

事業承継対策の手法いろいろ 事業承継税制や小規模宅地等の特例以外にも、中小企業の事業承継対策に活用できる技はまだあります。 たとえば「金庫株」の制度を使えば、株式を発行した会社の分配可能額に余裕があれ …

本の写真

改訂版『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』が発売されました

2024年6月3日に、改訂版『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』が発売されました。 2014年に初版を発行し、今年で10年の節目を迎えます。 多くのみなさまに手に取っていただいたおかげで、増刷と改 …

相続対策には生命保険より不動産?(後編)

不動産を買うなら相続税のことも頭に入れておく 税メリットや安定収入の確保だけを目的として行えるほど、不動産投資は甘くありません。でも、不動産を買うなら相続税のことも考慮して買った方がよいケースがありま …

謎だらけの過大役員退職給与(後編)

前回に引き続き、「過大役員退職給与」について考えます。 「いくらなら不相当に高額か」については謎だらけ 役員退職給与が「不相当に高額」か否かを類似法人と比較するため、審判所等では主に「功績倍率法」「1 …