相続時精算課税を使ってもよい人は?

相続税相談の現場から

精算課税を使ってもよい人

前回のコラムでご説明した相続時精算課税の落とし穴をふまえると、精算課税を使ってもよい人は、以下のいずれかに該当する方だけだと考えられます。

相続税がかからない人

財産が相続税の基礎控除額以下、つまり相続税が課税されない方なら、贈与が相続税で精算されません。特別控除額の2,500万円を積極的に活用し、財産を渡してもよいでしょう。しかし平成27年1月1日以後の相続は、相続税の基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に縮小されたため、相続税が課税されるリスクが残ります。

確実に値上がりする財産を持っている人

精算課税で贈与を受けた財産にかかる相続税は、「相続時」ではなく「贈与時」の時価で計算します。贈与時の時価が100万円で、相続時には時価が1億円になった株式なら、100万円として相続税を計算するので、相続税は得です(逆に値下がりしたら損になります)。

収益性の高い財産を持っている人

賃貸マンションなど、収益を生む財産を贈与すれば、その財産から生じる収入を生前のうちにあげる人からもらう人に移転できるので、相続財産の増加を抑えられます。どんなに高額な財産でも、20%の税負担で贈与が行えるのは大きな利点です。

将来の遺産分割争いを避けたい人

例えば同居している子に自宅を、会社を継ぐ子に自社株を、など特定の相続人に特定の財産を残したい場合には、相続ではなく贈与なら、あげる人の目の黒いうちに確実に財産を渡せます。
逆に、特定の相続人以外の相続人に精算課税で財産を渡し、生前に遺留分の放棄をしてもらうという方法も考えられます。遺留分の減殺請求を受ける恐れがないなら、遺言書通りの財産分けが実現するので安心です。

精算課税の落とし穴を理解した上で、改めてその特徴に目を向ければ、相続対策に活用できることもあります。
空前の生前贈与ブームの中、断片的な知識しかなく不安に思われている方も多いでしょう。自分に必要な、そして正しい情報を、ぜひ積極的に得るように心がけてみて下さい。

-相続税相談の現場から

関連記事

国税庁など「令和5年分相続税の申告事績の概要」を公表

国税庁や東京国税局などは、12月18日に「令和5年分相続税の申告事績」を公表しました。 相続税を納めた人や、相続税申告をした人の割合は、過去最高を更新しています。 相続税の課税割合と申告割合 国税庁や …

母の財産は誰のもの?

母の財産は誰のもの? 私が参加している「相続・後見マネー塾」では、メンバーが月に1回集まって、相続、後見、年金、生命保険などの各自が抱える事案につき、相談や議論をしています。 先日は雑談中に「父が亡く …

二拠点生活をする場合の住民税

二拠点生活をする場合、 住民税の「所得割」は、住民票を置いている市町村の方におさめます。 2か所に住まいがあっても、2か所におさめる必要はありません。 住民税は住民票をベースに判定される 原則として個 …

令和5年分用の相続税申告の手引き・ひな形が公表されました

令和5年分 相続税申告の手引き・ひな形公表 今月、国税庁のHPに、令和5年分用の相続税申告の手引きとひな形が公表されました。 令和5年中(1月1日~12月31日)に亡くなった方の相続税申告は、こちらを …

自分でできる相続税申告の本

改訂版『自分でできる相続税申告』が発売されました

『自分でできる相続税申告』の改訂版(第2版)が、昨日発売になりました。 自分で相続税申告をしてみたい、という方のお役にたてばうれしいです。 旧版→改訂版で変わった点 増刷の都度、民法や税法の改正につい …

相続税相談の現場から
ブログ