「保険ギライ」:会社の「もしも」は考えるが、自分の「もしも」は優先順位が低い

相続税相談の現場から

今回より、このコラムにて、日頃の業務やささいな出来事から感じたこと・考えたことなどをつづっていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。

税理士・会計士は「保険ギライ」?

初回のタイトルは「保険ギライ」です。
最初からこんなタイトルでは、保険会社の方に怒られてしまいそうですが、
以前、相続と保険に関連して講演をしたときに、参加者の方から「社長に保険を提案すると、すぐにダメ、と言うのは顧問税理士・会計士の先生なんです」と言われたことを思い出したからです。

そういえば、私の夫(会計士)も、あまり保険が好きではありません。今まで顧問先に保険の提案をしたことは一度もなく、当然、自分自身の保険にもつい最近まで興味はなかったようです。

決して顧問先のためを考えない旧態依然とした会計士というわけではなく、
会社や従業員を成長させたいと考える前向きで意欲ある社長の相談に、いつも熱心にのっています。社長から保険への加入を相談されれば、それを真っ向から否定することもありません。

会社の「もしも」は考えるが、自分の「もしも」は優先順位が低い

ただし、本業に真摯に取り組めば利益もキャッシュもあとからついてくる、という思いから、企業力を高めることに保険は直接寄与しないので、保険は不要と考えているようです。また、いい意味でも悪い意味でも、考え方がとてもポジティブです。

そんな彼と同じようなタイプの人は、私の知るオーナー経営者の中にもいます。
その方々の特徴は、

  • いくつになっても事業欲が強く、自分の退職や相続の話をされても、心に響かない
  • 本業第一で、会社さえしっかりしていれば、自分が死んでも残された家族が困るとは思わない
  • 会社の「もしも」は考えるが、自分の「もしも」については優先順位が低い

などです。

とはいえ、「社長は、オレのことはいいよ、っていつも言うけれど、遺言書も保険もないし株価対策もしていない。それって「オレ」じゃなくて「会社」の問題でしょ? もう平均寿命にも近いのに、息子や従業員はどうなるの?」とは、さすがの私にも言い出せません。

保険のメリットを知ってもらうには

経営者の視界には入っていない、でも明らかに存在している、ひとごとではない問題に、自分のこととしてどう目を向けてもらうか、それが税理士の力の見せ所なのでしょう。やり方に苦心する毎日です。

もしかしたら、私の夫も「保険ギライ」なのではなく、「保険知らず」だったのかもしれません。
昨年自分が入院したのをきっかけに、医療保険に加入し直しました。
保険知らずの人に保険のメリットを知ってもらうには、身を持って、がやはり一番早い方法だと分かりました。
どうやら「保険ギライ」も克服かな?

-相続税相談の現場から

関連記事

妻が自分の通帳を税理士に見せなかったら?

仕事も趣味も人生も 結果よりそこに至る「過程」をより楽しみたいもの。 楽しむかどうかは別として、「過程」が大切なのは相続税の申告業務も同じです。 正しい申告納税を行う「過程」 税務上、正しい申告納税を …

相続税がかかる人が増えたのは、なぜ?

「平成22年分の相続税の申告の状況について」が、2012年4月25日に国税庁から公表されました。震災の影響で申告期限が延長されていたこともあり、例年より約4ヶ月遅れです。 「平成22年分の相続税の申告 …

遺言書の内容と異なる分け方はできる?

前回のコラムでは、遺産分割協議がまとまらない理由や、長引いた際の問題点をご説明しました。 今回も引き続き、財産の分け方についてお話していきます。 遺言の指示通りに分けなくても構わない 実際の相続の場面 …

広くて大きい土地持ち=お金持ち?

※この「広大地の評価」は、平成29年12月31日以前に相続があった場合に適用できる規定です。 平成30年1月1日以降の相続については「地積規模の大きな宅地の評価」の適用を受けられるかを検討して下さい。 …

NISAの文字の木

新NISAについて よくあるご質問(基本編)

新NISAについて、投資初心者のお客様からよく聞かれる初歩的な質問をまとめました。 銀行と証券会社、NISAはどちらで開設した方がいいですか? NISA口座は「1人1口座」なので、どの金融機関で口座を …

相続税相談の現場から
ブログ