先日、あるお客様に相続税の試算結果をご説明したところ、「金融機関が試算してくれた金額とかなり差がある」と言われました。
確認させて頂くと、養子に関する取扱いの違いから、相続税にも大きな違いが生じていたのです。
相続税の計算上、「法定相続人の数」に含めることができる「養子の人数」
相続税の基礎控除額は、5,000万円+1,000万円×「法定相続人の数」です。
ただし、相続税の計算上、「法定相続人の数」に含めることができる「養子の人数」は、実の子がいれば1人まで、実の子がいなければ2人までに制限されています。養子を増やせば増やすほど、基礎控除額が増えるわけではないのです。
一方、民法上は「養子の人数」に特に制限はありません。養子の全員が相続人になり、親の財産をもらう権利を持っています。
「民法上、養子が相続人になれるかどうか」と、「相続税法上、養子を相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数に含めることができるかどうか」とは、まったく別の問題です。
ここまでは相続の基礎ですね。
ケース1:子が死亡、孫が父の養子
では(ケース1)の場合には、父の相続の際、孫はどう取り扱われるでしょうか。
(ケース1)
父より先に子が死亡。その後父が亡くなれば、子の代わりに孫が相続人になる(代襲相続)。
でも既に、孫が父の養子だったとしたら?
【民法上】
孫は「子の代襲相続人(孫)」と「父の相続人(養子)」の二つの立場を持ち、相続分はその両方を足したものになります。
【相続税法上】
基礎控除額の計算上、孫が二つの立場を持っていたとしても、1人としてカウントし、養子ではなく「実子」とみなすことになっています。孫は父の養子ですが、子が亡くなったから父の財産を相続するという側面もあり、故意に相続税を減らそうとしたとはいえないからです。
ケース2:子(養子)が死亡、孫も父の養子
では、次の(ケース2)の場合はどうでしょう。
(ケース2)
父より先に子(養子)が死亡。その後父が亡くなれば、子の代わりに孫が相続人になる(代襲相続)。
でも既に、孫も父の養子だったとしたら?
前述したお客様は、この(ケース2)の状況でした。
父には養子が3人いましたが、そのうちの1人は既に亡くなっています。残る養子2人のうちの1人がその亡くなった養子の子、つまり孫も父の養子だったのです。そのため、金融機関の方も混乱してしまったのかもしれません。
子と孫の両方が父の養子なら、なんとなく基礎控除額の計算上も、孫は養子として扱われることになりそうだからです。
でも、孫はあくまで子の代襲相続人である以上、相続税法上は「実子」とみなされます。実子である法定相続人として、養子の人数制限を受けることなく、相続税の基礎控除額を計算するのです。
ちょっとした誤解や理解不足から、取り返しのつかないミスをしないよう、気を配らなければなりませんね。