相続のエキスパート

福田真弓税理士事務所相続・家族・財産・カウンセリング

人生に、サステナブルな豊かさと心の健康を

Sustainable wealth and mental health

【第7回】 妻が夫の口座から自分の口座にお金を移したら「贈与」になる?

第1回~24回

普段、夫から家計の管理を任されている妻が
夫の預金口座からこっそり300万円を引き出し自分の口座に移しても
それだけでは、このお金は妻のものにはなりません。

妻名義の口座にあるお金でも、それは正真正銘、夫のものです。

贈与されない限り、夫の稼いだお金は妻のものにはならない

なぜなら日本では法律上、夫婦は「別」財産制であり、
お金を稼いだのが夫なら、それは夫だけの財産だからです。

たとえ一心同体の夫婦でも「夫の稼ぎは夫婦ふたりのもの」ではありません。
夫のお金を法的に妻のものにするには、夫から妻へ「贈与」を行う必要があります。

贈与があったかどうかは、法律上、次の2つの点から判断されます。

【贈与の成立要件】
(1)  「あげました」「もらいました」という両者の意思があるか
(2)  もらったという実態はあるか

(1) 「あげました」「もらいました」という両者の意思があるか
贈与は、あげる人の「あげる」という意思表示と
もらう人の「もらう」という意思表示の両方があって初めて成立します。

民法上は、口約束でも贈与は成立することになっていますが
「あげた」「もらった」という証拠である贈与契約書がないと、
他人に対してはそのことを証明できません。

(2) もらったという実態はあるか
また、贈与契約書という形式的なことだけではなく
「あげた」「もらった」という実態も伴っていないと、贈与があったとはいえません。

例えば、預金なら

・あげる人がもらう人の預金口座に、実際にそのお金を振り込むこと
・通帳や印鑑、カードはもらった人が自分で持ち、そのお金を自由に使えていること
・引っ越したり、結婚したりしたときには、住所の変更や改姓を、もらった人が
きちんと銀行に届け出ていること

などがポイントになります。

お金を稼いだのが夫なら、それは夫だけの財産

今回のケースでは、夫は家族の生活費の「管理」を妻に任せていただけで
「あげた」わけではありません。

それに、もし妻が夫から本当に300万円をもらったなら
たとえ夫婦の間であっても、もらった妻には贈与税がかかります。
贈与税の申告書を税務署に提出し、贈与税を納めなければなりません。

税金も払わずに、というか、そもそもそれ以前に贈与もされていないなら
変わったのは単に預金の「名義」だけ「持ち主」は夫のままなのです。

お金を稼いだのが夫なら、それは夫だけの財産です。

この民法上・税務上の考え方と、普通の人の考え方にはかなり大きな違いがあります。

自分名義の通帳だからといって、そこにあるお金まで自分のものだというわけではない

このことを一般の方に分かって頂くように説明するには
いつもとても時間がかかります。

-第1回~24回

関連記事

【第4回】 相続税の申告を間違えたら、いつまでに直した方が得?

税務署に提出した申告書に誤りがあり、払うべき税金が不足していたことに、ハッと気づいたとします(仮定の話です)。 相続税の申告を直す方法 その場合、正しく直す方法は2通りあり ・納税者側から修正する・・ …

【第2回】 相続税の連帯納付の義務がなければ、とことんもめても大丈夫?

先日、ある弁護士さんと税制改正の話になりました。 平成24年度の税制改正で「相続税の連帯保証人制度」が変わりました 今、話題になっている「消費税増税法案」、正式名称「社会保障の安定財源の確保等を図る・ …

【第6回】 遺言で愛する妻の再婚を阻止する方法

先日、ウィーン・フォルクスオーパーのオペレッタ「メリー・ウィドウ」の日本公演を観に行きました。 メインテーマは「大富豪の夫から多額の財産を相続した未亡人ハンナの再婚相手は誰か?」。 彼女には財産目当て …

【第11回】 「自宅の土地の8割引特例」の勘違い

最近は、相続税の特集を組めば雑誌の売れ行きがよいそうで、小規模宅地等の特例(いわゆる、自宅の土地の8割引特例)に関する記事も増えました。 でも、税理士の立場から見ると、他の相続税の記事に比べて間違いが …

【第3回】 相続税がかかる人が増えたのは、なぜ?

「平成22年分の相続税の申告の状況について」が、2012年4月25日に国税庁から公表されました。震災の影響で申告期限が延長されていたこともあり、例年より約4ヶ月遅れです。 「平成22年分の相続税の申告 …